[プレス加工の基礎知識] 金型とは?なぜ金型が必要か?

1. 金型とは何か?

金型は、自動車のドア、パソコンの外装ケース、家電、タイヤ、ビール瓶、ゴム靴、アルミサッシなど、私たちの生活を支えているさまざまな製品を作るために、必要不可欠な存在です。これらの製品は、金型によって安価な大量生産が可能になります。そのため、金型はモノづくりの母ともいわれます。

金型(工具)は、凹凸のある上下一対の構造です。金型の間に金属材料(素材)を入れ、荷重を付与する(プレス加工)ことで、素材を変形させます。すなわち、金型(工具)の凹凸を素材に転写させることで、望む形状の製品を得ることができます。金型の形状の意味を理解するには、金型に要求される機能の全体像を確認することが重要です(図1)。

図1:金型を用いたプレス加工の全体像

金型を作ることは手段であり、目的ではありません。また、金型は塑性加工技術の一つで、製品化のための手段です。これは設計における、機能と機構の考え方と同様です。すなわち、したいこと(機能)と、それを実現するための方法(機構)の関係です。機能と機構は、1対1に対応するのではなく、一般的には、1つの機能を満足させるために、複数の機構が存在します。この考え方を当てはめるならば、金型は、形状転写機能(製品を形作るための位置決め)と搬出機能(製品を取り出す離型)の2つの機能を満足させる、さまざまな機構で構成されているということができます。

2. なぜ金型が必要か?

製造業で使われる金型は、私たちの生活を支える重要な存在です。しかし、一般の人々がその存在を身近に感じることは、ほとんどありません。

日々、現場で金型を利用し、薄鋼板など被加工材のプレス加工に従事している人にとって、なぜ金型が必要かと考えることは大切です。自らの仕事を見直すだけでなく、このような問題意識を持つことは、考える技術者・技能者としてのスキルアップにつながります。

ここで、なぜ金型が必要か? の問いに戻りましょう。製造業は、人々の生活を豊かにする製品を作り続けています。また、時代の変化やニーズの多様化に対応するために、以下のような進歩が求められています。

製品開発のスピードアップ
製品の均一高精度化
製品のコストダウン
製品の多様化、小ロット化
製品の短納期化
製造の環境対策、軽量化

すなわち、生産における品質・納期・コスト(QDC:Quality、Cost、Delivery)の向上です。これらに対応するためには、まず、製品の最終形状に近い中間品を作り、そこから不必要な箇所だけを取り除く方法で、製品を作ります。また、できるだけ工程数が少ない生産方法が望まれます。これらの要望をかなえる、代表的な生産方法が、金型を利用する塑性加工の一つ、金属プレス加工法です(図2)。

図2:金型を用いた金属プレス加工法でQDCの向上を実現
金属プレス加工法を効果的に利用した身近な例が、硬貨です。硬貨は明治初期に、従来の鋳造による製造法を変更し、金型を利用した金属プレス加工法で作るようになりました。その結果、品質を均一に維持しつつ、安価な大量生産が可能になりました。

このように、同一形状の製品を比較的簡単に大量生産できる金型は、私たちの生活に欠かせない存在です。ドイツでは、金型は生産工学の王と表現されています。

3. 金型の機能

金型は、複数の部品によって構成されています。部品の機能として、以下の4つが挙げられます。

加工に直接関与する機能
上下型の位置関係設定に関わる機能
被加工材の位置決めに関わる機能
プレス機械への取り付けに関わる機能


これらの機能が、お互いに効率的な動きをすることにより、プレス加工を実現します。