プレス加工の種類:プレス加工の基礎知識5

1. プレス加工をイメージする

 

プレス加工は、直接観察することが難しい加工法です。そのため、見えないところで何が起きているかを理解するには、プレス加工のプロセスをイメージすることが重要です。まずは身近な例として、針金に力を加えたときに、針金が示す性質を思い出してみましょう。

  • 針金を曲げるとき、最初は曲げにくいが、ある力以上を加えると曲げられるようになる(弾性と塑性)
  • 大きく曲げるにつれて、硬さを感じるようになる(加工硬化)
  • 針金を曲げる前後の体積は同じ(加工前後体積一定)

これらの性質は、プレス加工の代表的な3つの加工法の現象と関係があります。

弾性と塑性:曲げた鋼板がわずかに戻る(曲げ加工)
加工硬化:せん断した箇所は硬くなる(せん断加工)
加工前後体積一定:平板がコップ状容器になる(絞り加工)

プレス加工では、これらの3つの加工法を組み合わせることで、製品形状を作ります。このような性質との関係を意識しながら、せん断加工、曲げ加工、絞り加工をイメージしてみましょう。

 

2. せん断加工

はさみで紙を切るとき、紙の厚さを考慮して、無意識にはさみの刃のかみ合いの隙間を微妙に調整しています。これが、プレス加工におけるせん断の身近な事例です。はさみを持つ手の握力がプレス機械、はさみの刃が金型、紙が被加工材で、プレス加工の3要素に対応しています(図1)。

図1:はさみで紙を切るメカニズム

図1:はさみで紙を切るメカニズム

ところで、せん断とは、どのような現象でしょうか。それは、物体にズレを起こすことです。はさみで紙を切るときは、紙の面に垂直な方向に、上下逆方向の力を加えることで紙は2つに切れます。この力を、せん断力といいます。断層にせん断力が働くことで発生するのが、地震です。

プレス加工では、パンチ(凸型の工具)とダイ(凹型の工具)を組み合わせた金型により、平板状態の被加工材に穴を開けたり、外形をせん断するなどができます(図2)。

図2:せん断の加工プロセス

図2:せん断の加工プロセス

せん断加工の種類には、分断や切り欠けなどがあります。また、どのプレス加工製品でも、最初にせん断加工を行う必要があり、せん断加工は全てのプレス加工の出発点です(図3)。

図3:せん断加工の種類

図3:せん断加工の種類

3. 曲げ加工

 

加工事例

曲げ加工は、平板や棒材およびパイプなどを、所定の位置で曲げるプレス加工です。曲げ加工を用いた身近な製品には、ホチキスやフック、クリップなどがあります。これらの製品の形状は、金属の平板を切って曲げることで得られます。単純に曲げただけの形状なので、加工は簡単だと思うかもしれません。しかし、一定の曲げ角を得ることは容易ではありません。

曲げ加工では、パンチとダイの間に鋼板を入れ、パンチを下降させることで、所定の角度や形状のフランジを作ります。材料の端部を丸める
ことで、利用する人の安全に配慮し、製品の強度も向上させるカール曲げやヘミング曲げ、円筒状の形状を作るロール曲げも、曲げ加工の
一分野です。また一部のメーカーでは、直線状の曲げでなく、わずかに湾曲した部分にフランジを作る成形を、曲げ加工と呼ぶ場合もありま
す。

4. 絞り加工

 

チタンの深絞り加工

絞り加工は、平板から容器状の製品を成形する加工法です。切断や接合をしないので、継ぎ目のない立体形状を作ることができます。身近な
製品としては、トレーや自動車部品、流し台、丸みを帯びた家電製品などがあります。絞り加工では、せん断金型の切刃(パンチとダイの両側)にあたる部分を適度な R(丸み)形状に変形させた金型を利用します。鋼板をしわ押さえとダイの間に挟み、鋼板をダイ穴に流し込むようにしてコップ状の立体形状を成形します。絞り加工は難しい加工法です。例えば、紙を使って継ぎ目無しのコップ容器を作ることをイメージしてみてください。絞り加工の難しさも同様といえば、理解しやすいのではないでしょうか。絞り加工と似た加工に、成形加工があります。成形加工は、板厚を大きく変化させることなく立体形状にする加工法です。ただし本稿では、絞り加工とは区別して、曲線状の曲げ加工(フランジ加工)を狭い意味での成形加工に位置付けます。また、フランジ加工には、加工線形状の違いによって、伸びフランジ成形加工・縮みフランジ成形加工があります。

 

塑性加工教育訓練研究所 小渡 邦昭