へら絞り加工のメリット・デメリット

へら絞りのメリット・デメリット

 

絞り加工にはへら絞りの他に、よく使われる手法としてプレス機を使ったプレス絞り加工という方法があります。へら絞りを使わず絞り加工をする際はだいたいそのプレス加工絞りが用いられます。

メリット

・初期費用が安くすむ

へら絞りは試作品や少量生産で製品を作る場合、プレス機を使うよりもコストが安くすみます。プレス機を使った加工なら金型が二ついるところが、へら絞りなら一つでいいためです。金型とは製品を作るための元となる型のことです。また、プレス機自体の値段も高いですし、材料費も薄い皿のような金属板1枚から製品が作れるのでそれほど掛かりませんので、試作品の製作や多品種少量生産の場合はへら絞りの方が適していると言えます。

・短納期で加工ができる

製作期間においても、へら絞りはプレス機を使うよりも圧倒的に早くできます。プレス機は一つの製品を作るにしても金型の製作からしなければならず、簡単な製品でも10日~20日、難しいものになると1か月~2ヶ月ほど掛かることもあります。ですが、へら絞りなら金型が不要で段取りも早くすむため、簡単な製品であればなんと1時間以内で、複雑な形状をしていても1週間あればできます。ただ、大量に作るとなると技術者の負担が大きくなってしまうので、大量生産をする場合はプレス機を使って自動化した方が効率が良くなります。これらのことから試作品や少量生産の場合はへら絞りで、大量生産する場合はプレス機を使って加工していくのが向いていると言えます。さすがに大量生産となるとプレス機を使って加工を自動化した方が効率がいいですが、まだ試作段階だったり多品種少量生産を目的としているならへら絞りの方が向いています。

・幅広い製品に加工できる

へら絞りは数ミリの小さな製品はもちろんのこと、何メートルもするような大きな製品でも問題なく加工できます。小さな製品で言うと細かい機械の部品、大型の製品には先ほども例に挙げたパラボラアンテナがあります。

また、鉄やアルミなどの加工しやすい素材であれば深絞り加工も容易です。深絞り加工とはコップや鍋などの底が深い製品を加工することで、反対にフライパンや金属の皿のような底が浅い製品の場合は浅絞り加工と言います。

ステンレスやチタンのような硬い素材は深く絞ろうとするほど難しくなりますが、それら以外の材料であれば複雑な形をした部品やある程度底が深い製品でも比較的容易に作ることができます。

・品質がよくなる

へら絞りで加工した製品はプレス機で加工するよりも表面が滑らかになります。バリが出ないので後処理も必要なく、技術のある人であれば製品ごとに厚さがバラバラになることもありません。バリとは金属を切ったり削ったりした時にできる粗のことで、これがあると表面処理をして綺麗にする必要があります。他にへら絞りには軽量化ができたり強度が高くなったりする利点もあるため、品質面で非常に優れた製品ができます。手絞りにおいても自動絞りにおいても、職人の技術や機械の機能はどんどん良くなっているので、品質や厚さなど精度が安定しなかった製品でも、年々へら絞りで加工できるようになってきています。

デメリット

・大量生産に向かない

これまで示してきたようにへら絞りは大量生産には適していません。デメリットと言えるほど致命的な欠点はあまりないへら絞りですが、1000個を超える依頼を受けた場合は効率的にプレス機にお任せした方がよいかと思われます。

・熟練した職人が必要

これも前述の通り、へら絞りは難しい加工であるだけあって技術の習得は容易ではありません。手に職をつけるには十分な知識と経験が必要となるでしょう。その理由から、これは製造業全体に言えることでもありますが、へら絞りにおいても若い世代の職人が不足しています。