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SUS304の用途・特徴について ‐プレス加工・深絞り加工

SUS304 とは?

 

 

 

ステンレスは日常的に私たちの生活に役立てられています。ステンレスは錆びに強いため、水回りの製品に使われることが多い金属です。普通金属は、水や空気に触れるとすぐに腐食していく錆に弱い性質を持ちますが、溶かした鉄にクロムやニッケルなどの錆に強い金属を混ぜることで錆びにくい合金鋼(ごうきんこう)になります。ステンレスは混ぜられる金属の種類や量によって特徴や性質が変わり、その種類はなんと200種類以上にも及びます。その中でも最もよく使用されているSUS304は、鉄をベースにクロムとニッケルを含有した「オーステナイト系ステンレス」に分類されます。 SUS304は加工のしやすい素材であることから、ステンレス鋼の中でも最も広く使われています。世界中で使われているステンレスの約7割がSUS304の種類になります。

 

用途

SUS304は、鉄鋼材と比較して、同等の強度があり、非常に錆びにくい性質があります。高価なことと、加工に手間がかかるので、比較的高級、高額な製品に使われています。家庭用品では、「18-8ステンレス」と呼ばれ、スプーン・フォークなどの食器などに使われています。また、流通量が多く、強度や温度変化にも優れているため、さまざまな業界で広く使用されています。

 

  • 建物:ビルの自動ドアやエレベーター、エスカレーターの銀枠や銀板、柱やドアの鏡面箇所、手すりなど
  • プラント:LNGタンク、原子力用設備
  • 工業製品:ボルト、ナット、ワッシャー、ピン、自動車部品
  • 機械設備:自動機部品、省力化部品、洗浄機部品

 

 

化学成分

SUS304はクロムを18%以上、ニッケルを8%以上含む鋼材です。SUS304は別名「18-8ステンレス(18Cr-8Ni)」と呼ばれます。この「18-8」が意味するのが「クロム18%以上、ニッケル8%以上」です。特にクロムは錆への強さに影響するため、耐食性を評価するのに重要な数値です。モリブデン(Mo)が添加されているSUS316には劣りますが、耐食性も良好です。

 

特徴

SUS304は成分にクロムとニッケルを含むオーステナイト系ステンレスに分類され、ステンレスの中では最も広く流通しています。また、SUS304は、他のオーステナイト系ステンレスのベースともなっています。SUS304よりも切削性を重視するならSUS303、耐食性を重視するならSUS316などがあります。溶接性も優れていて、鉄とそれほど違和感なく溶接することが可能です。しかし、切削性はあまり良くありません。鉄材に比べ粘性が高く、切削個所が加工硬化を起こすためです。この加工硬化によって、通常は非磁性であるSUS304が磁性を持つことがあります。また、オーステナイト系ステンレス全般にも共通しますが、SUS304は伸ばしやすく、粘りの強さがあります。そのため、深絞りや曲げ加工などもしやすく、かつ鉄などの他の材料との溶接性にも優れます。錆びにくく、低温・高温下でも扱いやすいのも特徴です。

 

耐熱性

機械部品として安全に使える上限温度は、おおよそ450℃~600℃程度と考えるのが一般的です。温度の上昇にともなって強度は低下し、750℃では常温の約1/3となります。更に上の温度でも使えない訳ではありませんがクリープなども問題になってきます。例えば1050℃の炉中ろう付けの治具としてSUS304が使われていたりしますが、徐々に変形して使えなくなります。また、600℃~800℃の温度で10分程度以上加熱されると鋭敏化(※)を起こし耐食性が悪化しますので、耐食性が問題となる場合はこの温度範囲で使用してはいけません。塑性加工を受けた材料(鍛造、加工率の高い引き抜き材、薄板など)は、450℃でも1時間程度で鋭敏化が起こります。低温については、低温脆性の心配もなく、液体窒素の温度:-196℃でも使用可能です。

※:クロム炭化物が析出することによって母材のクロムが欠乏(13%以下)し、粒界腐食や粒界型の応力腐食割れを起こしやすくなる現象

 

強度

引張強さは、520MPa以上(※1)となっていて、これは代表的な軟鋼であるSS400の400MPaよりも高い強度です。しかし、耐力は205以上(※1)とやや低くなっています。また、SUS304は、加工硬化しやすい特徴があるので、冷間加工によって大幅に強度が高まります。

※1:JIS G4303 ステンレス鋼棒

 

耐食性

SUS304は耐食性、強度等が優れており、錆びにくい特徴があります。 これは、レアメタルの一つであるニッケルを含んでいるためです。 ニッケルには粘りと強度を高める特徴があります。 クロムを合わせることで表面に保護力の強い酸化膜を生成し、耐食性を向上させます。

 

熱伝導性

鉄鋼材の熱伝導率が50W/m・K前後、アルミニウム合金が120~200W/m・K程度であるのに対し、SUS304の熱伝導率は、16W/m・K(常温)と低くなっています。切削加工では、刃先の温度が上がりやすいので、加工速度が上げられなかったり、ツールの持ちが悪くなったりします。部品を摺動させる機械や、圧入加工などの場合、摩擦熱が逃げないので接触部の温度が上がりやすくなります。特に、SUS304同士の部品を組み合わせると、かじりや焼付きを起こす場合があります。

 

磁性

SUS304はオーステナイト系なので、磁石には付きません。しかし、高強度材を使ったスプリングや、プレスで加工率の高い絞り加工などで作った部品に磁石を近づけると、弱い力でくっつこうとします。これは、冷間加工によって、面心立方格子のオーステナイトから、体心立方格子のマルテンサイトが生じたためです。極低温でも、同様にマルテンサイト変態が一部起こり、わずかに磁性を帯びるようになることもあります。

 

表面処理

SUS304は、ステンレス鋼なので通常は表面処理無しで使用できます。ステンレス鋼が錆びない理由は、不動態皮膜という非常に薄い酸化クロムの皮膜ができるからです。大気中でも不動態皮膜は形成されますが、表面に付着した異物などの電気化学的な影響で、不完全な不動態皮膜になりがちです。この被膜をより強固にしたい場合、パシベート処理(不動態化処理)を行います。パシベート処理は、硝酸などの酸で表面を酸化させる処理で、表面の異物を除去する効果もあります。航空機用の部品などでは多用されています。また、SUS304には以下のような表面処理が行えます。さまざまな表面処理に対応することも、SUS304が広く使われている理由の1つです。

 

・電解研磨(耐食性の向上)

・化学研磨(光沢感のアップ)

・黒ずみ除去

・つや消し

・バレル研磨やバフ研磨などの研磨

・ショットブラスト(滑り止め)

・不動態化処理(錆の防止)

 

価格

SUS304は、Niなどの高価な元素が入っているので鉄鋼よりも高価です。形状や条件により大きく異なりますが、ざっくり鉄鋼の4~5倍程度と思っておけば良いかと思います。鉄鋼材ではめっきや塗装が必要ですが、SUS304では不要になるメリットを生かし、小型部品などではトータルでSUSの方が安いというようなケースも考えられます。

 

まとめ

SUS304は錆や腐食に強く、加工性に優れることから、さまざまな用途で用いられています。加工時の磁化や硬化などのデメリットもありますが、加工技術の進化により解決が期待できます。しかし、SUS304は、設計者にとってとても使いやすい材料ですが、加工性の悪さによるトラブルや、使用中のトラブル(応力腐食割れなど)には注意が必要です。SUS304の特性を理解しておくことで、製造現場での課題解決に活かせるかもしれません。

 

岐阜精器工業のステンレス加工事例

製品用途 センサケース
材料名 SUS304
加工方法 プレス加工、順送型

 

製品用途

文房具・シャープペンシルのキャップ

材料名

SUS304

加工方法 深絞り加工 順送プレス

 

製品用途 温度センサカバー
材料名 SUS 304 T=0.3 ステンレス
加工方法 プレス加工 順送プレス

 

製品用途 低周波機 電極
材料名 SUS 304 T=0.5 ステンレス
加工方法 プレス加工 順送プレス

 


 

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